展示構成 : 6階展示室 熱き心、世界へ

「日本の美しいものをもう一度見直す・・・   それが世界でも通用することを証明したかった。」

日本人として初めてロンドンでファッションショーを開催し、大成功を収めた直後の山本寛斎の言葉です。
山本寛斎のファッションの原点、それは安土・桃山時代に遡る絢爛豪華な美の世界。あふれるほどにエネルギーを放つ婆娑羅の世界をこよなく愛する山本寛斎。1970年代当時、世界中の若者が憧れるファッションの最先端の地であったイギリス・ロンドンにおいて、日本人として初めてファッションショーを開催しました。ショーの中では歌舞伎の舞台や衣装にヒントを得た演出、作品を披露し、大喝采を浴びたのです。その後、山本寛斎は瞬く間に日本が世界に誇るファッションデザイナーのひとりとして活躍を続けます。
6階展示室(一部)では、世界デビューした1971年から1980年代後半まで、日本が世界に誇るべき美学を伝えるべく、魂をかけて表現してきた彼の代表作品を世界各地から収集、展示します。



左・中央:デヴィッド・ボウイ ステージ衣装(1973)/ 右:KANSAI IN LONDON 凧図案マント(1971)

主な展示作品

ジョン・レノンが着用したジャンパーを忠実に再現 ジョン・レノン ジャンパー(複製) ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、二人の認めたオフィシャル・プライベート・カメラマンであるボブ・グルーエンが、1980年12月6日に撮影した写真でジョンが着ていた山本寛斎のジャンパー(スカジャン)を、本展覧会のために山本寛斎本人が忠実に再現しました。カメラマンはこう回想しています。 ”I took the photo on Saturday, December 6th, very early in the morning, john liked the coat very much.”(12月6日土曜日にこの写真を撮影したんだ、早朝だった。ジョンはそのコートをすごく気に入っていたよ。)

1)KANSAI IN LONDON ドレス
(1971年/イギリス ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵)

「ベラボー凧(秋田県)」の図案を大胆にアレンジし、デザインにあしらったドレス。
1971年、日本人として初めてロンドンでファッションショーを行った際に発表され、その斬新さで話題をさらいました。

2)デヴィッド・ボウイ ステージ衣装
(1973年/デヴィッド・ボウイ蔵)

1973年、アメリカ進出をかけてニューヨークでコンサートを開催したデヴィッド・ボウイ直々の依頼によりワールドツアーのための衣装を手掛けた山本寛斎。普段はアメリカ・ロックの殿堂に展示されている作品が25年振りに里帰りします。

KANSAI IN LONDON ドレス (1971)



デヴィッド・ボウイ
ステージ衣装 (1973)

3)ジョン・レノン ジャンパー(複製)

4)ドレス 山口小夜子着用
(1983年/パリ・コレクション出品/個人蔵)

「鳳凰」を刺繍であしらったツーピース。
中国の昆明地方に住む山岳民族の衣装をヒントに制作されました。

5)イコン和刺繍ジャケット 山本寛斎着用
(1990-1991年/秋冬パリ・コレクション出品/山本寛斎蔵)

ロシア正教、イコンをモチーフにした繊細な金糸、銀糸の刺繍を背中全面にほどこしたジャケット。
日本有数の群馬県桐生市、横振刺繍ミシンの技が最大限に生かされています。
山本寛斎本人がタキシードジャケットとして着用していたものを展示。


パリコレクション出品ドレス
山口小夜子着用 (1982)


展示構成 : 5階展示室 山本寛斎の世界 ~燃える魂、日本の祭り~

「祭りの時、日本の女たちは艶めいた輝きと、美しさを見せる。そして、男たちは勇ましい姿と荒ぶる熱を発散する。そこには、誇るべき日本の美しさと、人間が輝く瞬間がある。」と山本寛斎は信じています。
マグマのように迸る人間の熱き心=祭りを、KANSAI SUPER SHOW「ハロー!ロシア」(1993年ロシア モスクワ・赤の広場)、「アボルダージュ~接舷攻撃~」(2004年日本武道館)、「太陽の船」(2007年東京ドーム)のために制作された華麗な衣装の数々と映像で表現。山本寛斎の世界~燃える魂、日本の祭り~をご堪能下さい。

主な展示作品

1)「ハロー!ロシア」衣装・東北地方背負子ジャケット(1993年)
背負子(しょいこ)からインスパイアされた衣装。日本海沿岸に伝わる古くなった着物を裂いて使うリサイクル技術・裂織(さきおり)でシルクの糸と布を編みこんだジャケットに仕立てました。

2)「アボルダージュ」衣装・着物(2004年)
山本寛斎が着目したのは天然素材で染めた昭和初期のアンティーク着物でした。背丈、手足が長くなった現代女性の体型に合わせるため、日本各地から収集してきた数十着の着物を全てほどき、洗い直したもの2~3着を組み合わせて1着に仕立て直した寛斎流究極のリサイクル着物。

3)「アボルダージュ」衣装・浴衣(2004年)
愛知県名古屋市有松に伝わる伝統の絞り染め。
その歴史は、徳川家康が江戸に幕府を開いてまもない慶長13年(1608年)まで遡ります。尾張藩が有松絞りを藩の特産品として保護し、竹田庄九郎を御用商人に取り立てて以来、400年の歴史を誇る有松絞りの様々な伝統技法を浴衣にあしらい衣装として採用。

4)「太陽の船」衣装・祭り装束(2007年)
江戸時代の終わりに房総半島で生まれた万祝い(まいわい)。
大漁時に船主や網主から関係者に配られた祝い着で、一同が揃いで着て神社仏閣に参拝しました。明治・大正時代をピークに昭和40年代頃まで作られていたこの万祝いと江戸時代に生まれた筒描染め古布を仕立て直した山本寛斎オリジナルの祭り装束。

5)「太陽の船」衣装・半纏(2007年)
漁船の大漁旗を綿入れ半纏に仕立て直し、モトクロスのライダースーツとコーディネイト。

<山本寛斎キーワード>

1.SUPER SHOW(スーパーショー)
ラスベガスの豪華華麗なショー、オリンピックの開会式、絢爛たるファッションショー、アクロバット、ダンス、音楽・・・あらゆるステージパフォーマンスを山本寛斎が「美」への限りなき探究心で結実させたオリジナルのショー。

2.HELLO!RUSSIA(ハロー!ロシア/1993年6月・モスクワ赤の広場)
外国人として、ロシア史上初めてモスクワ赤の広場を借りるという快挙を成し遂げ、開催したスーパーショー。12万人を動員し、当時の新聞に「第二次世界大戦以来、最大のショー」という見出しで掲載されました。

3.アボルダージュ~接舷攻撃(2004年7月・日本武道館)
新撰組・土方歳三の命を賭して信念を貫いた生きざまを山本寛斎本人の人生と重ね、スーパーショーとして結実させた構想30年のステージ。

4.太陽の船(2007年1月・東京ドーム)
夢を追い求め、彷徨する青年の旅を東京ドームの巨大空間いっぱいに圧倒的なスケールで描いたスーパーショー。


「ハロー!ロシア」衣装・
東北地方背負子ジャケット(1993)


「アボルダージュ」有松浴衣
山本未來着用 (2004)


「太陽の船」祭り装束/
伊勢谷友介・土屋アンナ着用(2007)


「太陽の船」祭り半纏(2007)