Official
デザイナー対談01:山崎 良太/ANTI × Hanju Park | 日本元気プロジェクト2021 世界遺産ランウェイ in 富士山 Produced by KANSAI YAMAMOTO, INC.デザイナー対談01:山崎 良太/ANTI × Hanju Park | 日本元気プロジェクト2021 世界遺産ランウェイ in 富士山 Produced by KANSAI YAMAMOTO, INC.

INTERVIEWER:村重 達也

山崎良太

山崎 良太

(デザイナー・アーティスト)

ANTI

様々な世界への憤りや反骨心を着用する服という作品で表現。過ぎ去る流行や大量消費システムに向けてのアンチテーゼを掲げ、一つの作品に向き合い全て手縫いで制作。絵を描く様にワンオフのアートピースにこだわり、ロンドンをはじめ海外や国内で発表している。服では史上初の第24回岡本太郎現代芸術賞に入選。

Hanju Park

Hanju Park

London College of fashion, UAL

国慶熙大学工業デザインを学んだ後、2021年ロンドンカレッジオブファッション メンズウェア科を卒業。「デザインは人、環境、社会と密接に関係し、人々の生活を豊かにするものでなければならない」というデザイン哲学のもと、工業デザインに基づく知識と技術を用いて衣服製作を行っている。

INTERVIEW TITLE

「日本元気プロジェクト2021 世界遺産ランウェイ in 富士山」の参加者は、国境を越え、山本寛斎にとって縁の深い英国からも。過ぎ去る流行や大量消費システムに向けてのアンチテーゼを掲げ、服としては史上初の岡本太郎現代芸術賞に入選を果たした山崎さんが選出したのは、今年London College of Fashionを卒業したばかりのパクさん。斬新なアプローチによって製作された「Origami Chair」とは?

2つのシンボルに惹かれてロンドンから

なぜ日本元気プロジェクトに応募しようと思ったのですか?

Hanju:
私は韓国人なので、もともと地理的にも近い日本の文化に非常に興味がありました。日本のファッションについて勉強する中で、デヴィッド・ボウイの衣装を手掛けた山本寛斎さんの存在を知り、とても衝撃を受けました。ボウイと寛斎さんは、ロンドンで知らない人はいないですから。そんな山本寛斎さんが立ち上げたプロジェクトに参加できる機会があることを知り、ぜひ応募したいと思ったんです。

応募作品の「Origami Chair」とはどんな作品ですか?

Hanju:
ファッションはとても人の体に近いものですが、家具も人の体に近いものと考えています。そこでファッションに家具の要素に取り入れたら面白くなるんじゃないかなと思って「椅子」をテーマに作品を作りました。パターンは折り紙の椅子の型紙を使っています。

山崎さんはパクさんの作品のどういうところに惹かれたんですか?

山崎:
とにかく、ぱっと見た中で一番目に留まりました。インパクトがあったのと、何をもとにパターンを引いたのか、いろいろ聞いてみたいなと思ったんです。
Hanju:
パターンは、生地を裁断する過程において、一切廃棄する部分がない、ZWPC process(Zero-Waste Pattern Cutting)に基づいて設計しています。この洋服に関しては、製作の段階からサステナブルであるということを目指しました。構造的には、たくさんの円を作って、トンネルのような形状にして、人の体がそのトンネルの中に入っていくようなイメージです。
山崎:
デザインとしてはバイカーの服をモチーフにされているということですが、なぜバイカージャケットだったんですか?
Hanju:
バイカーたちは、ものすごい緊張感の中で走り続けているので、バイカージャケットを脱いだ瞬間のほっとする感覚をデザインに込めました。脱いだ服がそのまま椅子になって、体を休めることができる。バイカーたちが一息ついた時の感覚を椅子で表現したくて、二重の意味を持たせています。
山崎:
とても面白いですね。バイカーズジャケットのモチーフだけでなく、「折り紙」の発想から作った作品、椅子だけに限らず、他にも見てみたいですね。

サステナブルであるということ

パクさんが今回製作された作品は、パターンの段階からかなりサステナブルを意識されていますが、山崎さんの創作活動においても大量生産、大量消費に対するアンチテーゼを唱えていらっしゃいますよね。

山崎:
そうですね。元々あるものをリメイクして、また新しい作品に変えるということをしているので、発想としては通ずるものがあると思います。
Hanju:
今、服作りをする上で環境問題について考えることは不可欠になっていますよね。この作品は、私がサステナブルという考え方を念頭において製作した初めての作品です。この服に関しては、素材だけでなく、機能についても完全にサステナブルであるということを目指しました。

山崎さんの作品は一体どうやって作られているのか?

Hanju:
山崎さんの作品を写真で見て、本当に素晴らしいなと思いました。特にこの独特なテキスタイルはどうやって作られているんですか?
山崎:
僕の場合は、もともと一つだったら目立たないものとか、忘れ去られたり捨て去られるものをつなぎ合わせることで、一つのアクセサリーだったり、洋服だったりといった作品に仕上げていくという手法を取っています。テキスタイルも同じで、この作品も、余った生地や、捨てられる生地の端切れなどをすべて手縫いで縫い合わせて、絵を描くような感覚で製作しました。
Hanju:
すごいですね。色も質感も様々で、たくさんの素材が使われているのに、すべてが調和して、一つのハーモニーになってるように感じます。

コロナがクリエイターに与えたもの

ロンドンでの生活は日本以上に新型コロナウイルスの影響が大きかったかと思いますが、パクさんの考え方やクリエーションにも何らかの影響や変化がありましたか?

Hanju:
ロンドンは完全にロックダウンになっていたので、大学にも行けず、生地屋さんにも行けず、ひたすら家に閉じこもるしかない日々が5か月以上続きました。その間、パターンをひいてもそれを印刷して型紙にするといった作業ができる状況になかったので、ひたすらPCでパターンの試作を繰り返していました。色々な方法を試す中で、今回のカッティング・折り紙・椅子という発想にたどり着きました。コロナがなければこれだけ長い間、パターンに向き合うことはなかったかもしれませんね。
山崎:
僕もコロナの影響で予定していた展示会ができなくなってしまって、少し落ち込んだりもしましたが、このマイナスの状況をどうプラスに変えられるか、一つの試練なのかなと思ったんですよ。逆に僕の作品を見直すチャンスなんじゃないかなと。僕の作品で元気をもらっていただける方が、一人でも多くいてくれたらうれしいなと思って、改めて全力で作品に向き合うきっかけにもなったかなと思います。

パクさんは今年卒業されたそうですが、今後の展望をお聞かせいただけますか?

Hanju:
まだまだテクニカルな部分を学びたいと思っています。縫うことであったり、テキスタイルであったり、基本的な技術をもっともっと勉強して、その上で自分なりのファッションのフィロソフィーを展開できるようにしていきたいです。

山崎さん、パクさんをはじめ、デザイナーやクリエイターを目指す若い世代に向けて、何かメッセージをいただけますか。

山崎:
ぶれない精神で続けること。これだけですね。