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デザイナー対談05:串野 真也/Masaya Kushino ×  市川 舞桜 | 日本元気プロジェクト2021 世界遺産ランウェイ in 富士山 Produced by KANSAI YAMAMOTO, INC.デザイナー対談05:串野 真也/Masaya Kushino ×  市川 舞桜 | 日本元気プロジェクト2021 世界遺産ランウェイ in 富士山 Produced by KANSAI YAMAMOTO, INC.

INTERVIEWER:村重 達也

串野 真也

串野 真也

(アーティスト・デザイナー)

Masaya Kushino

広島県尾道市因島出身。自然からインスピレーションを受け、ファイナルデザインをテーマにした靴の作品を最先端技術や伝統技術などを駆使して製作し、世界に向けて発表している。現在はバイオテクノロジ ーなど科学技術を取り入れたアート作品なども積極的に取り組んでいる。作品はイギリスの国立博物館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ニューヨークのファッション工科大学美術館に永久保存されている。

市川 舞桜

市川 舞桜

大阪文化服装学院

岐阜県出身。作品作りに対するテーマは、「もしかしたら」。私が知らないことは世界に沢山ある。勝手に自分の考えで決めつけるのではなく、色々な視点からみて1番自分に嵌ったものを選ぶことを大切にしている。

INTERVIEW TITLE

アートとプロダクトデザインの境界線を融合して、新しいモノの存在感とメッセージを創出し続ける串野さん。レディー・ガガがシューズを着用したことでも話題となり、世界から高い注目を集める串野さんが今回学生参加作品として選んだのは、大阪文化服装学院の市川さんが製作した「だるま」がテーマの衣装。同じくファッションとアートを融合させた創作を行う2人が語るそれぞれのクリエイションとは?

なぜ、だるま?

市川さんの作品のタイトルが、「二入四行論」。達磨が説いた思想のことですよね?この作品にはどういう思いが込められているんですか?

市川:
だるまって努力することを思い出させるというか、そういうものだと捉えていて、今回の作品も、見た人が直感的にだるまだとわかるように作りました。何度転がっても起き上がるってこともそうなんですが、だるまを見て、人がどう思うのかとか、なんでだるまがあるのか、とか。そういうことをコンセプトにしています。

ちなみに、肩から上の頭までを覆っている部分と、下のワンピース部分はそれぞれどんな素材で出来ているんですか?

市川:
下の部分はナイロンシャーで作っていて、上の部分は紙テープ、紙バンドです。サステナブルとか、そういったことも少し意識しています。

今回日本元気プロジェクトに応募した理由や思いがあれば教えてください。

市川:
「日本元気プロジェクト」と聞いたときに、漠然とですが、自分が考えてきたことや、作品を通して表現したいこと、問いかけみたいなものとうまくはまる部分があるかなと思いました。このだるまに行き着くまでに、自分がさとり世代だってことをすごく意識したことがあったんです。自分の世代も含む、20代〜30代が該当すると思いますが、あまり努力をしたがらない世代といわれていますよね。その世代に向けて、努力することを思い出すような、そういうだるまを作りたくて。そういうコンセプトで作った作品なので、日本元気プロジェクトにも合うんじゃないかなと思って応募しました。

改めてご自身で作品をご覧になってどうですか?

市川:
自分の中では、結構いい感じにできたかなって。これは昨年学校で製作したんですが、試行錯誤を繰り返して、いろいろなテクニックも試して、最終的にこの形になりました。日本元気プロジェクトに応募した写真も、最初だるまっていうことは伝えずに、周りの人にこういうのを撮影したよって写真を送ったら、みんながだるまって気付いてくれて、それはとても嬉しかったですね。
串野:
市川さんの作品は、ぱっと見のクオリティーの高さが、まず一番目に留まりました。写真にした時の色のトーンだったり角度だったり、様々な表現にこだわりを感じましたね。あとは造形的な視点で洋服を捉えているというか。彫刻的ですよね。すごく柔軟に考えてらっしゃるんだなってところも魅力的だと思いました。過去にもこういう彫刻的な表現の洋服を作られてらっしゃるんですか?
市川:
そうですね。今クリエイティブデザイナーコースに所属しているんですが、その学科が基本的にアートに近い作品を作るコースで、私自身リアルクローズよりもアートに近い作品を作るのが好きなので。今回のだるまは初期の作品ですが、とても思い入れがあります。

世界遺産 富士山で表現される自然のエネルギー

串野さんは、ご自身の作品も世界遺産ランウェイに参加されていらっしゃいますが、これはどんなクリエイションになるのでしょうか?

串野:
光とか風とか、そういう自然のエネルギーみたいなものを人が纏っているような、そういうエネルギーに満ちた作品になればいいなと思っています。僕の場合は、シューズにインパクトがあるので、洋服自体はその調和を取るために、収めるような形でデザインを考えました。光とか風とかって、どこのどういう場所にいても必ずあるものですが、富士山みたいな場所だと、もしかしたらより強く感じたりするかもしれないですし、感じるだけじゃなくて、作品の持つエネルギーもより強く発せられるかもしれないですよね。そういう場所で作品が表現できるのは、すごく意味があることだと思います。

コロナ禍によって、市川さんの学校生活にも変化があったかと思います。ご自身の内面やクリエイションに何か影響はありましたか?

市川:
学校で服作りのコンセプトを考えるとき、何かしらコロナは関係してくるし、みんなでコロナについて話す機会もたくさんあります。コロナを意識したテーマで作品づくりをする人も多いです。ただ、自分としてはあまりコロナに引っ張られすぎたくないというか。コロナからイメージされるのは、ネガティブな要素が大半ですが、そこから逆転してポジティブな表現を目指す人も多いんですが、それでいうと、私はあくまでネガティブなものを、ネガティブなままに捉えて表現するみたいな方がしっくりきますね。

自分の創作活動がどの位置にあるのか、立ち止まって俯瞰してみる。

市川さんは現在3年生ですよね。来年以降の夢や進路は?

市川:
企業にデザイナーとして就職しますが、自分の好きなことはずっとやっていきたいなとは思っていて、それを人から評価していただける機会があればとても嬉しいです。アート作品を作る中で、今はその選択肢として服を作っているという感じなので、服に限らず、今後もこういったアート的な作品は作っていきたいです。
串野:
市川さんにとって、ファッションとアートの違いって何ですか?
市川:
うーん…。正直、ファッションの、特にリアルクローズのコレクションとかを見るよりも、絵とか芸術作品とかを見るほうが面白いなと思う瞬間が多くて。その違いといったらあれですが、リアルかリアルじゃないかっていう、表現がちょっと難しいですね。あまり考えたことがなくて。
串野:
なるほど。僕自身もそういう側面はあると思います。僕の靴も、じゃあ、履けるのかどうかっていうのは、よく質問されますし。ファッションなのかアートなのか彫刻なのか。僕自身、その境界線ってあまり重要じゃないんですよね。多分、市川さんは今の時間軸で作品を製作されていると思うんですけど、ご自身の創作活動が、ファッションだったりアートだったり、そういったフィールドの中のどの位置にあるのか。芸術の歴史が続いていく中で、この作品がどこの点になるのかっていうところを少し意識しながら作ったりすると、創作が広い視野で見えたり、あるいは伝えたいメッセージが深まったりするかもしれませんね。作品の持つ意味や思いがより人にも伝わりやすくなると思うし、作品を作るやりがいみたいなものもより強くなるんじゃないかなと思います。微力ながら、こんな考え方もあるよってことを、今後の市川さんへのエールとして送らせてください。